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次に簡単な結核の疫学モデルを提示し、上の問題をモデルできに構成し、さらに結核対策の疫学的な意義を解説した。最後にWHOのグローバル結核対策パッケージについて延べ、患者発見・治療の重要性について解説した。(OHP使用、テキスト付録に)

 

? 結核治療の原理(Dr Hong)
主として薬剤耐性の問題について、その基礎的概念、発生機序、検査実施上の問題点、再治療の問題について解説した。とくにTransitional resistanceの存在と意義、薬剤感受性検査の成績の臨床的な意味づけの難しさについて、?技術的要因(培地の違い、培地への接種菌量の差、菌の集塊形成、inspissationなど)、と同時に、?宿主要因(血中濃度の到達度の薬剤・個体差;一般にRFPやINHは高く、EBやPASは低い、など−)の作用も重要であることなどにも言及した。

 

? 結核とHIV(Dr Pacheree)
タイ国北部のチェンライ県はタイでも有数のHIV高蔓延地域であり、その講師が勤務する県病院の男子入院患者の7割がHIV陽性といわれる。ここで1980年代以降観察された結核、HIV陽性者、両者合併症例の動向、特性、問題点について具体的に報告した。
病院で発見される結核患者数は1985年213、1996年には690、また結核患者のHIV陽性率は1990年1.5%、1996年49.3%、そして結核患者の致命率は1990年10%、1996年39.4%となっている。
講師は結核研究所が国際共同研究事業で行っているHIV・結核研究のプロジェクトのフィールドのカウンターパートの1人である。

 

? 塗抹陰性結核と肺外結核(森、Dr Hong)
実際には相当な割合で治療の対象となっている塗抹陰性結核は、これまではWHOなどの見解では治療が排除ないし疑問視されてきた。一方HIV流行とも相まってこのような患者も積極的な治療の対象とすべし、という意見も強まりつつある。これについて簡単な臨床意思決定モデル、患者の予後モデルを用いて、そのような患者を治癒することの効果を救命1件当たりの経費として求めた。この値はX線フィルムの読影精度(近い将来に塗抹陽性結核に進展しそうな人をどの程度確実に「要医療塗抹陰性」患者と診断しうるか)によって大いに異なるが、例えば菌陰性患者の治療に関する香港スタディ程度の読影精度ではこの治療政策は経費効果的ではない。
このような考え方のあることを解説した。(OHP使用、テキスト一部付録に)

 

 

 

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